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院長の奥村尚威です。
今回は、私が今まで見てきた映画で、お気に入りの映画をご紹介いたします。
1991年4月に日本で公開されたアメリカ映画 ペニーマーシャル監督の レナードの朝です。
この映画は、ロバート・デニーロ演ずる 嗜眠性脳炎患者 レナード・ロウと、人付き合いが極端に苦手なロビン・ウイリアムス演じる、マルコム・セイヤー医師との友情を描いた実話に基づいた作品です。
嗜眠性脳炎はエコノモ脳炎とも呼ばれ、第一次世界大戦時に流行しました。高熱と複雑な脳神経症状がみられ、回復期には嗜眠状態を呈する疾患ですが、現在はほぼ診られません。
この疾患になると、映画でも描かれていますが、覚醒することが困難で、眠った状態がずっと続きます。また、人によっては、せん妄,多動,そして急激にパーキンソン症候群が出現する方も診られます。
ニューヨーク ブロンクスの慢性神経疾患病院に赴任してきたセイヤー医師はなんと臨床経験はない研究医です。しかしながら、持ち前のまじめさと、観察力で、患者の特徴を捉え、治療を進めていきます。ある日、患者に反射神経が残っていることに気づいたセイヤー医師は、ボールや音楽など様々なものを使った訓練により、患者たちの病状を改善することに成功します。そして、さらなる回復を目指し、パーキンソン病の新薬(おそらくドーパミン製剤と思います。)を試してみるのです。この試すというのは当時はまだ一般的な治療ではなく、公式には認められていない薬だったためです。上級医や家族を説得し、最も重症だったレナードに投与を開始するのです。
当初は改善が診られませんでしたが、根気強い投薬で、ある日レナードは自らベッドから起き、30年ぶりに目を覚ましたのでした。この成果で、この新薬を他の患者にも使用し、その結果、皆が目覚めていったのでした。
30年ぶりの町はレナードにとって、すべてが新鮮であり、セイヤー医師との患者と医師という関係を越えた友情をはぐくんでいきました。
ある日、たまたま知り合った女性に恋をし、外出を懇願しますが、医師団から反対され外出の夢は叶いません。次第に自暴自棄になるレナード。それでも懸命に治療に当たるセイヤーとのやり取りがなんとも切ない気持ちにさせられます。そして、薬の効果は次第に弱くなり、病状が悪化していきます。メイヤーは全力で治療を進めていきますが、ついにはレナードは元の寝たままの状態に戻ってしまうのでした。。。
セイヤー医師は、一度は目覚めさせたレナードを、再び嗜眠へ至らせてしまったことに対し、はたして自分のしたことに何の意味があったのだろうと自分を責めます。そして罪悪感すら抱く様になってしまいます。しかし、最後は慰めてくれる人が現れ、セイヤー医師自身も心を癒されていくのでした。
セイヤー医師の、自分のしたことに何の意味があったのだろうというのは、もしかしたら、多くの医師が一度は感じたことがあるのではないでしょうか? 自分が信じた治療、エビデンスに基づいた治療を心を込めて行っても、もしかしたら100%上手くいくとは限りません。病との闘いは、やはり試行錯誤も含め、こういうことがつきものです。だからこそ、医療を探求していくことの意味があるのだと思いますし、もっといい治療を、もっといい治療をと医師を掻き立てるのです。
21世紀の現代においても、人間の体はわからないことの方が多いといっても過言ではないくらい複雑なものです。レナードの朝を改めて診た時に、真に患者さんのために何をすべきなのかということを考えさせられました。これからも、より良い医療を実践していくために、勉強は当然ですが、熱意、気持ちも必要だと思いました。
以上、レナードの朝 のご紹介でした。いい映画だと思います。もしよかったら、ぜひご覧になってくださいね。
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奥村尚威
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