『全部ちょっと高いだけ』――それ、本当に別々の問題でしょうか?
血圧、HbA1c、LDLコレステロール、中性脂肪、尿酸、脂肪肝、eGFR。健診結果では別々の欄に並んでいますが、体の中では互いに影響し合っていることがあります。
健康診断の結果を見て、こんなことはありませんか。
一つ一つは『すぐ病気というほどではないかも』と思える数値でも、複数の異常が重なると意味が変わります。
生活習慣病の診療で大切なのは、数値を一個ずつ眺めることではなく、心臓・脳・腎臓・血管をまとめて守る視点です。
高血圧、糖代謝異常、脂質異常症、肥満、脂肪肝、慢性腎臓病(CKD)は、別々に診断される病気です。しかし実際の外来では、これらが同じ患者さんに重なって見つかることは珍しくありません。
背景には、内臓脂肪の蓄積、インスリン抵抗性、塩分過多、運動不足、睡眠、飲酒、喫煙、遺伝的素因、加齢など、複数の要因が関係します。
厚生労働省の特定健診も、40〜74歳を対象にメタボリックシンドロームへ着目し、生活習慣病の発症予防を目的としています。
重要なのは、『どれか一つを正常にする』ことではなく、将来の心筋梗塞・脳卒中・腎機能低下などのリスクを全体として下げることです。
高血圧は自覚症状がほとんどないまま進むことがあります。診察室で高くても家庭では正常な『白衣高血圧』もあれば、診察室では正常でも家庭で高い『仮面高血圧』もあります。
そのため、一度の測定値だけで判断せず、家庭血圧を継続して測ることが非常に重要です。
日本高血圧学会は2025年に新しい『高血圧管理・治療ガイドライン2025』を発行し、治療だけでなく、予防・生活習慣改善を含む包括的な血圧管理を重視しています。
血圧が高い状態が長く続くと、心臓、脳、腎臓、血管へ負担が蓄積します。『症状がないから大丈夫』とは限りません。
HbA1cは、最近の血糖状態を反映する重要な指標です。しかし、HbA1cだけを一回測って糖尿病と確定診断するわけではありません。
日本糖尿病学会の『糖尿病診療ガイドライン2024』では、糖尿病の診断は血糖値やHbA1cを組み合わせ、必要に応じて再検査を行って総合的に判断するとされています。
『HbA1cが少し高い』段階は、何もせず待つ時期ではなく、体重、食事、運動、血圧、脂質、家族歴などをまとめて確認する良いタイミングです。
また糖尿病では、血糖だけでなく、腎臓・眼・神経・心血管リスクまで含めた管理が重要です。
脂質異常症で特に重要なのはLDLコレステロールです。ただし、目標値は全員一律ではありません。
年齢、喫煙、高血圧、糖尿病、CKD、冠動脈疾患や脳梗塞の既往、家族歴などによって、必要な管理強度は変わります。
日本動脈硬化学会のガイドラインでも、脂質だけを見るのではなく、動脈硬化性疾患の総合的なリスク評価が重視されています。
『LDLが少し高いだけ』でも、血圧・血糖・喫煙などが重なると話は変わります。
脂肪肝は、飲酒だけが原因ではありません。肥満、糖代謝異常、脂質異常症、高血圧など代謝異常と関連する脂肪性肝疾患は、現在はMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)という考え方で整理されています。
日本肝臓学会では2026年にMASLD診療ガイドラインが改訂されています。
脂肪肝の多くは症状がありません。しかし、一部では炎症や線維化が進むことがあります。そのため『肝機能の数値が少し高い』『エコーで脂肪肝と言われた』場合には、体重・糖代謝・脂質・飲酒量・薬剤なども含めて確認します。
慢性腎臓病(CKD)では、早期には自覚症状がないことが多くあります。
腎機能は血清クレアチニンから計算するeGFRだけでなく、尿蛋白・尿アルブミンなども重要です。日本腎臓学会の『CKD診療ガイド2024』でも、腎機能だけでなく、高血圧、糖尿病、脂質異常症、生活習慣などを含む包括的な管理が扱われています。
腎臓は血圧の影響を受け、逆に腎機能低下が血圧を上げる方向に働くこともあります。糖尿病と腎臓、血圧と腎臓は、切り離して考えにくい関係です。
尿酸値が高くても、痛風発作がなければ症状はありません。しかし高尿酸血症は、肥満、高血圧、CKD、飲酒などと重なっていることがあります。
薬が必要かどうかは尿酸値だけでは決まりません。痛風歴、腎機能、尿路結石、併存疾患などを確認して個別に判断します。
たとえば、次のような健診結果だったとします。
例:50代、症状なし
一つだけなら経過観察になる項目があっても、これらが重なると、医師は『血管・心臓・腎臓を長期的にどう守るか』という視点で評価します。
だから生活習慣病診療では、『基準値から何ポイント外れたか』だけではなく、年齢、体重変化、家族歴、喫煙、家庭血圧、薬、既往歴などを含めて判断する必要があります。
必要な検査は人によって異なりますが、一般的には次のような情報を組み合わせます。
糖尿病や腎障害のリスクがある場合には、病態に応じて尿アルブミンなど追加評価を検討することもあります。
よく聞かれる質問です。
薬を開始するかどうかは、単に『数字が高いから』ではなく、将来の合併症リスクと、生活習慣改善でどこまで改善できるかを考えて決めます。
一方で、薬が必要な状態なのに『薬を飲みたくない』という理由だけで長期間放置すると、その間にも血管や臓器へ負担が続く可能性があります。
生活習慣改善と薬物療法は対立するものではありません。必要な人では両方を組み合わせます。
『痩せなきゃ』『運動しなきゃ』『塩分も糖質も脂質も全部減らさなきゃ』と考えると、続きません。
実際には、現在の生活を確認したうえで、優先順位を決めます。
『完璧な生活』を目指すより、続けられる改善を積み重ねることが現実的です。
健診異常の多くは緊急疾患ではありません。ただし、非常に高い血圧に加えて胸痛、息苦しさ、強い頭痛、麻痺、ろれつが回らないなどの症状がある場合や、強い口渇・多尿・著しい倦怠感など急激な体調変化がある場合は、通常の健診フォローを待たず速やかな医療評価が必要です。
生活習慣病の怖さは、長い間ほとんど症状がないことです。
一方で、症状が出る前に見つけられることは大きな利点でもあります。
血圧、HbA1c、LDL、脂肪肝、eGFR――どれか一つだけを見るのではなく、全体を一枚の地図として読む。
それが生活習慣病の診療で大切な考え方です。
健診結果を、そのままにしていませんか?
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予約枠が埋まっている場合は、予約なしでも受診できます。
2026年9月17日時点の公表情報を基に作成しています。個々の診断・治療目標は年齢、既往歴、合併症などによって異なります。
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